ひとりごと

迷いながら書きます。読んでいただきありがとうございます。

最後の晩餐

今週のお題「お弁当」

 

“最後の晩餐に食べたいものは?“という、よくある質問に、学生時代の頃は必ず【母の作る甘い卵焼き】と答えていた。

母親が作る卵焼きは、甘く、ふわっとしていて、とても美味しい。

お弁当の2切れだけでは物足りず、晩ごはんのおかずに出して欲しいとねだったこともある。

(その日の夜「アレンジしてみたの!」と嬉しそうに出してくれた卵焼きは、出汁がきいたのっぺりとした卵焼きで、それはそれで美味しかったのだが、しょんぼりとした気持ちは隠せなかった。)

 

お弁当の中の卵焼きは、黄色く輝いていて、とても美味しく、お昼休憩の時間を、毎日等しく幸せなものにしてくれた。

いつも2切れ入っていたので、最初のひとくち、最後のひとくちを、必ず卵焼きにしていた。そうすると、お弁当の時間、最初から最後まで、幸せな気持ちでいられるのだ。

わたしにとって、母親の卵焼きは、唯一無二で、幸福の象徴だったと思う。

 

しかし、いまのわたしが“最後の晩餐”で食べたいものは【伊勢海老の味噌汁】である。

浅ましい大人になってしまった。

甘く、ふんわりとした卵焼きは、いま、わたしの夫の好物になっている。

 

ちなみに、夫に“最後の晩餐に食べたいものは?”と尋ねたところ【焼き肉】と答えられた。わたしの手料理ではないらしい。

しばらくして【とんかつ】も捨てがたい、と声をかけられた。

夫は難しくても、子どもができたら、わたしの手料理を選んでもらえるように、愛情込めてごはんを作ろうと思う。